本書は、障害があることで利用できる福祉サービス、公的な支援策、経済的なサポート制度などを、
本人の年代やシーンごとに紹介しています。こういった制度を知ることで、漠然とした不安を抱えて
いる状態から、悩みの具体的な課題を明確にします。そして、自分たちは今後どんなことを準備して
いけばいいのかも見えてくるはずです。
目次
はじめに
障害児・者が受けられる福祉サービスのあらまし
障害者を支援する法律と施策の流れ
障害のある子をサポートするサービス
第1章 障害のある子が受ける保育・教育
――障害があるとわかったら――
子どもに障害があるとわかるのはどのようなときですか?
障害が疑われたらどこに相談すればいいですか?
障害児の福祉サービスにはどのようなものがありますか?
「要観察」の段階で利用できるサービスはありますか?
――障害がある子の教育――
教育システムの基本とされているインクルーシブ教育とは何ですか?
障害のある子はどのように小学校を選びますか?
障害のない子といっしょに授業を受けてついていけますか?
特別支援学校?の授業は地域の小中学校とどのように違いますか?
特別支援学校の高等部では専門的な教育を受けられますか?
コラム 大学に進学する障害者への支援
第2章 わが子が働く年齢になったらどんなサービスがあるか?
――就労相談――
就職に不安があるとき相談できる窓口はありますか?
就職活動にプラスになるような訓練をするところはありますか?
障害のある子が就職する場合どのような方法がありますか?
障害のある人を雇用する特例子会社とはどのような会社ですか?
一般就労をめざしているのですが何か支援サービスはありますか?
就労移行支援の利用期間が過ぎても支援サービスは受けられますか?
企業などに就職したあとに受けられる支援サービスはありますか?
就労定着支援の対象外の人でも就職後に支援してくれますか?
在宅でできる仕事を探すときはどのような方法がありますか?
コラム 「障害者基本法」の概要
第3章 障害者手帳によるサービスの種類と受け方
――障害者手帳――
必要なら障害者手帳の取得をためらわないで
身体障害児・者は身体障害者手帳を申請
知的障害児・者は療育手帳を申請
発達障害の子は知的・精神いずれかの手帳を申請
障害者手帳によるサービスのいろいろ
国や自治体が実施している各種の福祉手当
障害者扶養共済制度は将来頼りになる制度
障害者本人や扶養者が受けられる税金の特例がある
各種の割引・料金の減免などのサービス
――医療サービス――
障害者医療費助成制度とは?
自立支援医療制度を利用する
第4章 生活面で利用したい各種のサービス
――障害者総合支援法の概要――
「障害者総合支援法」とはどのような法律ですか?
支援対象となるのはどのような人ですか?
対象となるサービスにはどのようなものがありますか?
サービスにかかる費用はどれくらい負担するのですか?
経済的に費用の負担が難しい人はどうしたらいいですか?
サービスを利用するときはどのような手続きが必要ですか?
障害支援区分の認定とはどのようなことですか?
サービス利用の申請はどのようにすればいいですか?
コラム 申請に必要なマイナンバーカードと通?知カード
第5章 20歳になったときの障害年金の受け方
――障害年金の基本――
公的年金の基本的な知識を身につけておこう
障害年金はどんな人がもらえますか?
障害年金を20歳からもらえるのはどんな人ですか?
年金額は障害の程度で決まる
就労すると障害年金はどうなりますか?
障害認定には「永久認定」と「有期認定」がある
――障害年金の請求――
「20歳前の障害基礎年金」の請求のしかた
「診断書」の依頼はどのようにしますか?
本人や家族が書く「病歴・就労状況等申立書」
請求から支給までの流れはどのようなものですか?
コラム 親が死亡したと?き遺族年金がもらえる場合
第6章 親が亡くなったあとわが子はどうなるか?
――将来の不安――
親なきあと、障害のある子をだれに託すか?
家族で話し合っておくことの大切さ
「障害のある子に多く残す」は、よく考えて
――相続の基本――
相続の基本を知っておこう
法定相続人の順位と法定相続分
障害のある子に財産を残すときは遺留分を意識して
相続税の障害者控除は障害者に有利な税制
――遺言書の書き方――
子どもたちが争わない遺言の残し方とは?
自筆証書遺言の書き方と残し方は?
公正証書遺言の書き方と残し方は?
「付言事項」で親の気持ちを伝えましょう
遺言執行者という便利な存在があります
――成年後見制度――
成年後見制度とはどんなしくみですか?
法定後見制度と任意後見制度の違いは?
成年後見制度はいつから利用したらいいですか?
成年後見人はどんな人がなるのですか?
任意後見制度の使い方は?
日常生活自立支援事業を利用しましょう
――信託制度――
福祉型信託とはどういうものですか?
生命保険信託とはどういうものですか?
遺言代用信託と特定贈与信託とは?
――その他のしくみ――
障害者扶養共済とiDeCoとはどういうものですか?
――将来の住まい――
障害のある子の生活の場はどこになりますか?
グループホームでの生活のようすとお金のしくみ
施設入所支援による施設の生活は?
高齢で要介護状態になったときの住まいは?
――介護保険制度――
自分と子のために知っておきたい介護保険
介護保険サービスはどのくらい費用がかかりますか?
障害者手帳の種類について
障害者手帳とは、身体や精神面で障害がある場合に取得できる手帳のことで、3つの種類があります。
1.身体障害者手帳
2.療育手帳
3.精神障害者保健福祉手帳
障害者手帳を取得するメリットとしては、さまざまな福祉サービスを受けられたり、手当がもらえたりすることがあげられます。例えば、医療費の負担金が軽減されたり、公共料金や税金の減額などがあります。デメリットとしてあげられるものは特にありません。障害者手帳を取得することは任意のため、必ずしも申請が義務ではありませんが、メリットを考えると取得するとよいでしょう。手帳が不要になった場合は、いつでも返却することができます。障害者手帳は、職場や学校において、周りの人に障害があることを知らせるアイテムとなるため、社会に参加しやすくなります。
福祉サービスや手当の内容は、各市区町村によって異なることもあるので、自分が住んでいる地域の公式ホームページなどから、確認するとよいでしょう。
身体障害者手帳とは(申請、等級、メリット)
身体障害者手帳の申請には主に、医師の診断書・意見書や、本人の顔写真、申込書が必要となります。
障害者手帳が欲しいと思ったら、まず自分が住んでいる市役所の福祉課へ行き、申請書をもらいましょう。申請時に何が必要なのか、書かれているので確認します。医師の診断書・意見書は、指定医のいる病院で診断書を記載してもらう必要があります。申請に必要な書類がそろったら、市役所へ申請に行きます。申請後、身体障害者手帳が交付されるまでには3?4週間かかることが多いため、早めの申請をしましょう。
身体障害者には、1?7の等級があります。等級の数字が若いほど重度が高いということです。身体障害者手帳の交付を受けられるのは、1?6級と判断された場合です。
等級の詳しい内容については、厚生労働省のホームページから確認できます。
身体障害者手帳のメリットは、さまざまな福祉サービスを受けられることです。医療費が割引されたり、車椅子や歩行器など生活に必要な補助具の助成を受けられたり、住宅に手すりを付けたい、段差をなくしたいなどリフォームする必要がある時に助成を受けられたりします。
療育手帳とは(判定、等級、割引などのメリット)
療育手帳は、主に知的障害がある場合に交付される手帳です。この制度は、法律で定められたものではないため、各自治体によって、制度の名称やサービスの内容、判定基準はさまざまとなるため、住んでいる地域の情報を確認する必要があります。判定は主に、知能指数と、日常生活(食事、排泄、更衣など)でどれぐらいの援助を必要とするかによって判断されます。
自治体によって基準が異なりますが、療育手帳の等級は、A判定、B判定がありA判定の方がより重度が高いものとなっています。具体的な区分は各自治体のホームページを確認してください。
療育手帳のメリットは、さまざまな支援を受けられることです。大人であれば就労支援を受けられ、障害者雇用枠で仕事に就くことができるため有利になります。子供の場合は、保育園に入る際に優先的にしてくれたり、特別支援学校へ入る際に証明書として使えます。また、公共交通機関の割引や税金の優遇も受けられます。
精神障害者保健福祉手帳とは(更新、割引サービスなどのメリット)
精神障害者保健福祉手帳とは、精神的な障害を抱えている人に交付される手帳です。知的障害と精神障害の両方がある場合には、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の両方を取得することもできます。障害者の人が社会に参加しやすく、自立を促すことが目的となっています。
精神障害者保健福祉手帳の等級は、1?3級となり、数字の若い方が重度が高いということになります。身体障害者手帳や療育手帳と異なる点は、有効期限があることです。手帳の申請をしてから2年の有効期限が設けられているため、その都度更新が必要です。
サービス内容は、手当が受けられたり、税金が安くなったり、公共施設やレジャー施設の割引がされたりと、自治体によってさまざまです。障害がある人は、日常生活において援助が必要な場面が多々あります。食事や入浴を手伝ってもらえたり、外出時に付き添ってくれる「介護給付」を利用できたり、働きたいと思った時に援助してくれる「訓練等給付」を利用できるのもメリットです。
障害者手帳のメリット、デメリットまとめ
障害者手帳のメリットをまとめると以下のようになります。
1.医療費が安くなる
2.税金が安くなる
3.就職する際に、障害者雇用枠で入れる
4.公共料金の割引がされる
5.映画館や美術館などの料金が割引される
障害がある場合、病院にかかる頻度が増えたり、日常生活を送るうえで車椅子などの補助具が必要となったり、生活しやすいように家をリフォームする必要があったりと、お金が必要となる場面が多くあります。手帳を持っていることで、受けられる福祉サービスを利用すれば、経済的に助かる人は多いでしょう。申請するには、医師の診断書が必要であったり手間はかかりますが、それ以上のメリットがあると考えられます。
デメリットは、手帳をもつことで自分が障害であるということを社会的に証明することになるため、障害があることを人に知られたくないという人には、受け入れにくい可能性はあります。デメリットとメリットを比較してから申請しましょう。